semiconductor Parting the Waves
セミコンダクター Parting the Waves
2017 7.1-8.5
2017 7.1-8.5
[credit :semiconductor:Ruth Jarman and Joe Gerhardt]
Parting the Waves は、量子シミュレーションの手法と視覚的言語を用いた映像作品です。サイエンスはいかにして量子の世界を捉えようとしているのか、またその振る舞いをいかに記述しようとしているのか。本作は量子の世界への科学的探求のフレームワークへの接点として位置付けられる作品です。
アーティストのセミコンダクターは、多数の点がプロットされた曲面形状をスタート地点として、量子系におけるパーティクル間の相互作用を数値計算により巧みに表現しています。映像はサウンドと同期しており、量子系における3つの概念(フェイズ、シフト、インタラクション)を表現するために、特徴的な周波数を選択し、調和と非調和の混在する世界をあらわにします。さらに、量子系におけるコヒーレンス/デコヒーレンスの概念は、視覚的かつ聴覚的ノイズを通して表現され、量子力学と古典的力学の違いにより系の振る舞いが変化する様子が説明されています。
量子シミュレーションはモデリングを通して自然世界を近似的に捉えようとする試みです。幾重にも積み重なっていくモデリングの研究成果は、研究者が量子世界の本質を探り、それを他者に伝えるための言語と言えます。人工的に作られた科学の言語で自然の振る舞いを体験する本作品は、我々の自然体験や世界認識がサイエンスの影響をいかに受けうるのか、そんな問いを投げかけてきます。
セミコンダクター | Semiconductor
Ruth Jarman と Joe Gerhardtによるイギリス人アーティストユニット。彼らの作品はつねに最新の科学的知見に裏付けられており、鑑賞者の視覚、知性に強く訴える魅力を有している。見えないものを可視化する様々なデヴァイスを用いながら、この世界の根底にある物理法則、その本質を探るセミコンダクターは、いかに我々人間がサイエンスとテクノロジーのレンズを通してこの世界を認識しているのか、人間の持つ世界認識がいかに変容していくのかという問いを投げかけている。
http://semiconductorfilms.com/
Credit: Matthias H. Risse